今週の忘却の旋律

第5部 迷宮島編 「出口という入り口」
 
メロス同士の淡々とした、真っ向勝負が見物であった。
あとは、モンスターたちの名前がギリシャ神話から取られたものであること。
メロスも「走れメロス」のメロスで間違い無いようである。
己の心と対峙し、それでも走る事を止めない戦士に相応しい名だ。
 
牛の支配者としての愚痴は、まったく正直なものだったろう。
勝手に崇められ、勝手に畏れられ、自分の意思などどこにあるのか。
また、モンスターには生命力などもともと無い、と言った。
迷宮の外は、真の迷宮であるとも。
 
モンスターとは、実体を持たない存在ではないか。
モンスターとは、人間の思考の中に潜むものではないか。
モンスターとは、人間が作り出したものなのではないか。
そして、それはまさしく現実世界そのものではないか。
そんな疑念がぐるぐる回る。
 
ソロの正体が、モンスターキングであったとは。
モンスターたちの会話を見る限り、モンスターのリーダー的存在らしい。
そして、忘却の旋律の本体を捕えている存在。
ベテランのクロフネが気付かなかったことからすると、
モンスター以外に姿を見せたことはないのだろう。

モンスターキング、その姿はメロスの戦士に良く似ている。
メロスの戦士は、他人に支配されることを良しとしない、
強い意志、反抗の心だと前に書いたが、そういう人間は、
支配者としての適性も持っているものなのである。
彼は、メロスの戦士の鏡として存在しているのではないか。
もっと言えば、ボッカの鏡である。
 
モンスターキングを倒した後、人々は新しい支配者を求める。
その時、ボッカは人々に絶望しないと、本当に断言できるのか
その時、ボッカはソロにならないと、本当に断言できるのか。
そんな問いが聞こえてくる。
 
今回、サヨコの思いは、時空を超えてボッカに届いた。
少しだけ、心が近づいただろうか。
一切心情に関係のない言葉だったのが、センスを感じさせる。