今週の鉄人28号

今回は、一話完結ものである。
 
熱帯雨林の戦地で、未知の熱病に苦しむ兵士を助けようとした一人の医師。
限られた医療設備で、最後まで助けようと、一緒に帰ろうとした彼は、
「もういいんだ。あんたは良くやった。もう楽にしてくれ」
兵士の諦めの言葉に、とうとう最後の手段。安楽死を選ぶ。
 
終戦で、日本に帰ってきた医師=ブラック博士は、さらなる悲劇にあう。
病の進行が遅いだけで、彼自身もその熱病にかかっており、
その顔を醜く変貌させてしまい、あまつさえ、一人息子に感染させてしまったのだ。
そこで、彼の医師としての何かが、変わってしまった、崩れてしまった。
 
罪のない村人を実験体にして、抗体を作ろうとするブラック博士。
全ては、熱病を憎むあまり、己の罪(安楽死)を憎むあまり。
戦地での経験、己と息子の発症で、かれの生命への認識は歪んでしまったのだ。
 
こむづかしく。
 
博士は言う。
「鉄人、お前も同じ穴のムジナ。気をつけろよ」
憎しみ、後悔、罪の意識。それゆえの希望。
戦争が生み出した大きな歪み、その象徴たる鉄人である。
人の想いは、時として大いなる奇跡を生み、多くの人を救う。
人の想いは、時として大いなる悲劇を生み、多くの人を殺す。
 
ブラック博士のしたことは、悪である。
だが、果たしてそれを裁く正義など、本当に実在するのか。
キリストは言った。
「この罪人に石を投げるなら、罪なき人からまず投げよ」
誰も、投げられなかったという。
 
鉄人は、それを操る正太郎は、必ずしも正義ではない。
ただの巨大な暴力装置と、ただの未熟な少年である。

あまりまとまりがないが、このくらいで。